"I Didn't Know What Time It Was"に対して付された「時さえ忘れて」という邦題も、見事なものの一つだと思う。この楽曲を生み出したのはブロードウェイを代表するヒットメーカーの二人、作曲がリチャード・ロジャース、作詞はロレンツ・ハートである。とな…
ウェブサイトなどでよく目にする、「新着情報」といった意味の"What's New"をタイトルとするスタンダードナンバーがある。もっとも、追ってお分かりの通り、文法上の用法、意味合いは異なる。この"What's New"は、ビング・クロスビーによる大ヒットやリンダ…
今回は、「朝日のようにさわやかに」でも少し触れた「恋人よ我に帰れ(Lover, Come Back to Me)」をご紹介しようと思う。上の記事で述べた通り、これらはいずれも1928年にブロードウェイにかかった「ニュー・ムーン」のために書かれたもので、オスカー・ハマ…
ロックやポップスにおいては、ギターはほとんどの場面で主役を演じる看板楽器だが、ジャズの世界に目を転じると、その輝かしい座に君臨するのはトランペットやテナーサックスなどのホーンであり、ギターは場合によってはピアノ・ベース・ドラムスにも道を譲…
"Falling in Love with Love"(邦題:恋に恋して)は、詞をロレンツ・ハート、曲はリチャード・ロジャースによってものされた―と来れば類推される通り、劇作品のための楽曲で、実際同曲は1938年11月23日に初演を見たブロードウェイ・ミュージカル…
"My Foolish Heart"(邦題:愚かなり我が心)は、マーク・ロブソン監督により撮られ1949年に公開された同タイトルのアメリカ映画の主題曲である。作曲は「星影のステラ」なども書いたヒットメーカーのヴィクター・ヤング、作詞はニューリー・ワシントンが手掛…
"The Way You Look Tonight"に対して「今宵の君は」という邦題を当てたのが誰かは存じ上げないが、見事な訳であると言うべきだろう。それに対し、この曲が作中で使われた、1936年封切りのアメリカ映画"Swing Time"を「有頂天時代」とした御仁―は固より、これ…
ふと気づくと、ジャズ・ミュージシャンの紹介がだいぶご無沙汰となっており、特にドラマーについては、本サイトの初期に(2)としてアート・ブレイキー、フィリー・ジョー・ジョーンズを取り上げて以来、既に二年近くが経過してしまった。そこで今回は、久しぶ…
近年、この時季に街中でクリスマス・ソングをあまり耳にしなくなったように思う。これは一つに、ハロウィンの方へ人々の目が移ったことに加え、未だ収束の見えないコロナウィルスの蔓延状況も大きく関与しているに違いない。個人的には、宗教心もないのに徒…
これまで取り上げたスタンダードナンバー・名曲のほとんどが、図らずもミュージカルをはじめとする舞台や映画といったより広いショービジネスの領域から生まれたものとなってしまったが、もちろん音楽の世界に芽生え育って大輪の花を咲かせた作品も数多い。…
今回は「ジャズ・レーベル(4)」として、先の3大レーベルに比べるといくぶん知名度は低いものの、やはりジャズシーンにおいて忘れることのできない「ヴァーヴ(Verve)」をご紹介したい。1944年、ロサンゼルスのフィルハーモニック・オーディトリアムというクラ…
今回は、個人的に長年ちょっとした疑問を抱いているスタンダードナンバーを取り上げたい。「恋とは何でしょう(What Is This Thing Called Love)」がそれである。作詞・作曲を手掛けたのはミュージカルや映画のために数々の名曲を生み出したコール・ポーター…
今年は梅雨明け後もぐずついた空とじっとりとした空気が長く続き、少なからず気を塞がれていたが、ここへきて漸く本来の秋らしい陽気に変わってきた。そうなると先の「枯葉」と並んで聴きたくなる一曲に、作詞・作曲いずれもヴァーノン・デュークによる「ニ…
ジャズのアルバムもレーベルを通じて世の中へ送り出されるわけだが、このレーベルとの関わり方という観点から見て、作品を直接生み出すアーティストを大きく二種に分けることができる。すなわち、一つ所に腰を据えて活動するのを好むタイプと、それとは対照…
今の時季、午後の眩い陽射しを浴びているとこの曲を聴きたくなる―という人は少なくないと思う。そう、「イパネマの娘(The Girl from Ipanema)」である。わざわざ説明するまでもないだろうが、イパネマはブラジルのリオデジャネイロにあるビーチで、元々この…
タイトルを目にしただけで、「聴いてみたい」と食指を動かされる曲がある。 「Body And Soul(身も心も)」はその最たるものの一つだろう。 今般取り上げるのは、ジャズのスタンダードナンバーとしての同曲だが、実際、全く同じタイトルを冠したものがいくつも…
ジャズのメッカと言えば、その発祥の地ニューオーリンズ、ニューヨークといった地名がまず思い浮かべられるだろうが、禁酒法時代にアル・カポネの跋扈したシカゴもまた忘れてはならない都市で、そこから数多のアーティストが全米、さらには全世界へと羽ばた…
アメリカの音楽を世界に知らしめた最初の、そして最大の功労者と言えば、誰もがジョージ・ガーシュウィンの名を挙げるのではなかろうか。そのガーシュウィンは1935年、ミュージカルの嚆矢とされる、全3幕9場からなるオペラ「ポーギーとベス」を発表した。原…
ビル・エヴァンス(p)がスコット・ラファロ(b)、ポール・モティアン(ds)と残した次の4枚のアルバムは、「リバーサイド4部作」と呼ばれることがある。・Portrait in Jazz ・Sunday at the Village Vanguard ・Waltz for Debby Explorations この「リバーサイド…
前記事において、タイトルに「星(star)」という単語を含むスタンダードナンバーの多いことを述べたが、それ以上に目立つのが、同じく夜空を飾る、我々にもっとも近しいともいえる天体、月を冠した曲である。いま、思い付くままに挙げてみても、Moonlight Ser…
いわゆる「音楽一家」はジャズの世界にも見られ、その代表格は、父親と四兄弟がプロのミュージシャンとして名を成したマルサリス・ファミリーであろうが、ハンク、サド、エルヴィンのジョーンズ三兄弟、およびパーシー・ヒースと二人の弟も忘れてはなるまい…
タイトルに「星(star)」という単語を含むスタンダードナンバーの多いのは、夜空に煌めく星の美しさ、神秘的な魅力などを考えれば至極当然と言えよう。実際、特に意図したわけでもないのに、本サイトでも「スターダスト=星屑」「星に願いを」の二曲を既にご…
今回はブルーノート(Blue Note)に続いてジャズ・レーベルを取り上げる。第二次大戦後、アメリカでは雨後の筍の如く新しいレーベルが次々と誕生し、その中に、後に三大ジャズ・レーベルの一つと称されることとなるプレスティッジ・レコード(Prestige Record)…
先の「ジャズ・レーベル(1)―ブルーノート」で、同レーベルらしい魅惑的なカヴァーを具えたアルバム例として「クール・ストラッティン(Cool Struttin')」を挙げたが、今回はそのリーダー・アーティストであるピアニスト、ソニー・クラーク(Sonny Clark)をご紹…
「時の過ぎゆくままに」と同じく、邦題に些か問題のあるスタンダードナンバーとして、「朝日のようにさわやかに(Softly, As In A Morning Sunrise)」を挙げることができる。この曲もまた、元々は1928年に公開されたオペレッタ―ミュージカル「ニュー・ムーン…
振り返ってみると、もう長い間、アーティストと名曲・名演とを織り合わせながらご紹介してきた。無論、いずれのテーマもまだまだ尽きることはないのだが、ここで新たな主題を追加するのも悪くはないだろう、と思い付いた。それすなわち、ジャズのレーベルで…
先にご紹介した「いつか王子様が」と同じく、ディズニー映画の主題歌からスタンダードナンバーとしての確固とした地位を確立した曲に「星に願いを(When You Wish Upon A Star)」がある。このようなルーツの共通性に加え、両者は、曲自体は固より、邦題の具え…
ジャズの世界では、若くしてこの世を去ったアーティストが少なくない。これまでにご紹介した中にも、リー・モーガン(享年35、以下同様)、ポール・チェンバース(35)、クリフォード・ブラウン(26)、スコット・ラファロ(25)といった例を挙げることができる。そ…
「時の過ぎゆくままに」という、非常に味のある邦題に訳されている"As Time Goes By"もまた、元々ブロードウェイ・ミュージカルのために書かれた曲である。作詞・作曲ともハーマン・フップフェルドの手になり、1931年、「エブリバディズ・ウェルカム」の挿入…
この時季、街へ出ると(実はあまり出ないのだけれど…)、さまざまな場所で、同じ曲を、違った形で耳にすることが多い。そんな曲には、タイトル・メロディともにすぐピンとくるものがある一方、メロディは耳に馴染んでいても、そのタイトルの方は思い浮かばない…