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ドラム(3)―エルヴィン・ジョーンズ

ふと気づくと、ジャズ・ミュージシャンの紹介がだいぶご無沙汰となっており、特にドラマーについては、本サイトの初期に(2)としてアート・ブレイキー(Art Blakey)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(Phillie Joe Jones)を取り上げて以来、既に二年近くが経過してしまった。

 

そこで今回は、久しぶりにこれを主題として書きたいと思う。

 

登場願うのは、エルヴィン・ジョーンズ(Elvin Jones、1927年9月9日-2004年5月18日)である。

 

Elvin Jones

 


エルヴィン・ジョーンズはハンク(Hank, p)、サド(Thad, tp)という二人の優れたジャズ・アーティストを兄とし、斯界ではジョーンズ三兄弟として有名であることは、先にサド・ジョーンズの記事で述べた通りであるが、ジョーンズを姓とするミュージシャンは上のフィリー・ジョーをはじめとして他にも数多おり(もっともこれは、ジョーンズ姓そのものの割合が高いのかもしれない)、音楽業界の多方面に活躍したレナード・フェザー(Leonard Feather)の企画による、メンバー全員ジョーンズで録音された「The Whole Town's Talking About The Jones Boys」なるアルバムもある。

 

しかし一方、血を分けた実の兄弟である三人揃っての盤は少なく、私の浅学もあるが、思い付くのは「Keepin' Up With The Joneses」「Elvin!」くらいだ。

 

 

 

 


これは、同じ兄弟、しかも同一ジャンルの音楽に取り組んではいたものの、それぞれの性格もあってのことだろう、音楽性の面で異なる要素が濃かったためだろう。

 

二人が顔を合わせるだけなら、それも競演として面白いものとなるかもしれないけれど、三様の三者が会するとなると、まとまりをつけるのは至難だったに違いない。

 


エルヴィンのパフォーマンスを語る際に忘れてならないキーワードは、ポリリズム――すなわち複数の律動を同時並行的に叩き出すドラミングだ。

 

これにより生み出される、独特のうねりを伴う、躍動感に満ちた雄大な音空間は、ジャズ演奏の屋台骨を支える土台としては勿論、マックス・ローチとはまた異質の「旋律」を聴く者に強く印象付ける。

 


ドラムを叩き始めたのは20歳頃と、早熟な才能の多いこの世界では遅かったらしいが、1950年代前半にデトロイトで活動した後、1955年にニューヨークへ出てチャールズ・ミンガス(Charles Mingus, b)の呼びかけに応じてマイルス・デイヴィス(Miles Davis, tp)とともに「Blue Moods」を録音、これは二人ともミンガスに借金があっての参加だったとも言われ、その演奏は現在あまり高くは評価されていないものの、1957年のソニー・ロリンズ(Sonny Rollins, ts)のピアノレス・トリオによるライブ「ヴィレッジ・ヴァンガードの夜(A Night At The Village Vanguard)」ではエルヴィンの本領が遺憾なく発揮されている。

 

そして1960年代に入ると、ジミー・ギャリソン(Jimmy Garrison, b)、マッコイ・タイナー(McCoy Tyner, p)とともに盤石のリズム・セクションを形成し、ジョン・コルトレーン(John Coltrane, ts)の「黄金のカルテット」を支えて数々の名盤を世に送り出したのである。

 

https://www.youtube.com/watch?v=1j7tr_68Vaw