星に願いを(When You Wish Upon A Star)
先にご紹介した「いつか王子様が(Someday My Prince Will Come)」と同じく、ディズニー映画の主題歌からスタンダードナンバーとしての確固とした地位を確立した曲に「星に願いを(When You Wish Upon A Star)」がある。
このようなルーツの共通性に加え、両者は、曲自体は固より、邦題の具える特質、その情趣もまた類似していることも記しておきたい。
「星に願いを」が世に出たのは、「いつか王子様が」誕生の三年後、1940年のことで、映画「ピノキオ」の主題歌として、ネッド・ワシントン(Ned Washington)、リー・ハーライン(Leigh Harline)によりそれぞれ詞と曲が書かれ、映画の中では冒頭と末尾で、物言うコオロギ「ジミニー・クリケット」の声を演ずるクリフ・エドワーズ(Cliff Edwards)がこれを歌った。
このクリフ・エドワーズは、ウクレレ・アイクとのニックネームが示すようにウクレレ奏者として知られた他、軽演劇やショーにおける喜劇俳優、歌手、さらに声優として多才な活動を展開し、1929年には「雨に唄えば(Singin’In The Rain)」のヒットを飛ばしている。
しかし、「雨に唄えば」と言えば、1952年に公開された同名のミュージカル映画、およびその中でのジーン・ケリーの歌唱を思い浮かべる人が多いだろうし、さらにはジュディ・ガーランドなども取り上げたことから、エドワーズの影はすっかり薄くなってしまった。
これはエドワーズの今一つのヒット曲となった「星に願いを」についても同様で、冒頭に述べた通りこちらもスタンダードナンバーとなって様々なアーティストが絢爛たる花を咲かせ、元の一輪を覆い隠してしまった感を否めない。
何とも不運な巡り合わせだが、ジミニー・クリケットという稀有なキャラクターとの繋がりにより、エドワーズは現在まで多くの人々の記憶に留まっていることは幸運と言えよう。
では、ここでいつものように原詞と、お目汚しに拙訳を記そう。
When you wish upon a star
星に願いをかけるとき
誰であろうと区別はない
Makes no difference who you are
心を籠めて望むなら
Anything your heart desires
Will come to you
どんなことでも叶うはず
If your heart is in your dream
あなたの心に夢があるなら
No request is too extreme
どんな望みを抱いてもいい
When you wish upon a star
星に願いをかけるとき
As dreamers do
夢見る人がするように
Fate is kind
運命は慈悲深く
She brings to those to love
優しく満たしてくれる
The sweet fulfillment of
愛しい人々が胸に抱く
Their secret longing
密やかなその望みを
Like a bolt out of the blue
それは青天の霹靂のように
Fate steps in and sees you through
突然降り来たって心を見抜く
When you wish upon a star
星に願いをかけるとき
Your dreams come true
あなたの夢は叶うはず
さて、元々はヴォーカル曲であるこの「星に願いを」だが、ジャズにおいてはインストゥルメンタルによるパフォーマンスが多いようだ。
さらに、詞の内容・曲調からだろう、ピアノトリオによる演奏が目立つ。
その中から、次の二つをお聴き頂いて本稿を終えるが、同じ編成だけにそれぞれのパフォーマンスの特質を捉えやすいと思う。
・キース・ジャレット・トリオ(Keith Jarrett Trio)
・ケニー・ドリュー・トリオ(The Kenny Drew Trio)