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恋人よ我に帰れ(Lover, Come Back to Me)

今回は、「朝日のようにさわやかに(Softly, As In A Morning Sunrise)」でも少し触れた「恋人よ我に帰れ(Lover, Come Back to Me)」をご紹介しようと思う。

 

jazz-cafe.hatenablog.com

 


上の記事で述べた通り、これらはいずれも1928年にブロードウェイにかかった「ニュー・ムーン(The New Moon)」のために書かれたもので、オスカー・ハマースタイン2世(Oscar HammersteinⅡ)、シグマンド・ロンバーグ(Sigmund Ronberg)がそれぞれ詞と曲を手掛けている。

 

この劇作品はクラシック音楽の要素を色濃く纏っており、ミュージカルではなくオペレッタと呼ぶのが相応しいと感じるが、呼び名はともかく、劇中、管弦楽をバックにしたイーヴリン・ハバート(Evelyn Herbert)による「恋人よ我に帰れ」の歌唱にもその特徴を聴くことができ、これは1930年、さらに1940年の映画化においても踏襲された。

 


しかし間もなく、ビリー・ホリデイがこれを取り上げたことでジャズ、さらにはより広いさまざまなポピュラー音楽の世界へと急速に浸透してスタンダードナンバーの地位を確立するに至ったのである。

 

この広がりを鑑みるに、「恋人よ我に帰れ」に関しては特に、「ジャズの」と限定すべきではないだろう。

 

 

 

 


その詞は次のように、短い詩行(?)を重ねた中にふッと長めのものを入れ、その対照で恋する者の想いの強さ深さを見事に表現している(付:拙訳)。

 

The sky was blue
空は青く
And high above
そして澄んでいた
The moon was new
月はまだ見えず
And so was love
恋も同じだった
This eager heart of mine was singing
わたしの恋焦がれる心は切望していた
Lover, where can you be?
愛しい人はどこかにいるの?

 

You came at last
あなたは遂に現れて
Love had its day
恋の日々が始まった
That day is past
でもあなたとともに
You've gone away
もう行ってしまった
This aching heart of mine is singing
わたしの疼く心は切望している
Lover, come back to me
帰って来て、愛しい人

 

When I remember every little thing
あなたのちょっとした仕種を
You used to do
思い出すたび
I'm so lonely
とても寂しい
Every road I walk along
わたしが歩くのは
I walk along with you
どれもあなたと歩いた道
No wonder I am lonely
だからこそ寂しいの

 

The sky is blue
空は青く
The night is cold
冷たい夜が来る
The moon is new
月は見え始めたのに
But love is old
恋は色褪せて行く
And while I'm waiting here
ここでこうして待ちながら
This heart of mine is singing
わたしの心は切望する
Lover, come back to me
帰って来て、愛しい人

 

 

最後にジャズにおける「恋人よ我に帰れ」の名パフォーマンスを二つ。

 

いずれも原曲とは表面上大きく趣が異なるが、それぞれ独自の魅力を具えると同時に、根底には共通する情調をも保持しているように思う。

 

https://www.youtube.com/watch?v=yczvZyzOXKA

https://www.youtube.com/watch?v=EmzqjzRqmpM