ジャズ on the net|JAZZの名曲・名演を動画で試聴

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今宵の君は(The Way You Look Tonight)

"The Way You Look Tonight"に対して「今宵の君は」という邦題を当てたのが誰かは存じ上げないが、見事な訳であると言うべきだろう。

 

それに対し、この曲が作中で使われた、1936年封切りのアメリカ映画"Swing Time"を「有頂天時代」とした御仁――は固より、これを良しとしてしまう当時の、そして現代まで続く業界の姿勢の方には……何とも眉を顰めずにはいられない。

 


映画はフレッド・アステアとその名パートナーであるジンジャー・ロジャースを主演に、ジョージ・スティーヴンス監督の下制作され、アステアの歌う同曲がそのドラマに見事な彩を添えている。

 

そしてアカデミー賞の最優秀歌曲賞も受賞し、巷でも大きな人気を博するという、この上ない果実を実らせたのである。

 

 

 

 


作曲はブロードウェイにおいて数多の名曲を生み出したジェローム・デイヴィッド・カーン(Jerome David Kern)、作詞を手掛けたドロシー・フィールズ(Dorothy Fields)もまた、斯界に多大な貢献をした女流作家である。

 

同曲を初めて耳にした時、その美しい旋律に思わず涙した――と伝えられるだけあって、ドロシーの詞も単純簡潔でありながら人の想いの普遍性を十全に歌い上げている。

 

先ずはそれを――必要に応じて拙訳をご参考に――見て頂こう。

 

Someday when I'm awfully low
いつか気分がひどく落ち込んで
When the world is cold
この世界を冷たく感じても
I will feel a glow
僕の心は明るくなる
Just thinking of you
ただ君のこと、今宵の
And the way you look tonight
素敵な君の姿を想うだけで

 

Oh, but you're lovely
何て愛らしいのか
With your smile so warm
君のやさしい微笑みは
And your cheeks so soft
そしてそのやわらかな頬
There is nothing for me
僕にはほかに何もない
But to love you
あるのはただ君を
And the way you look tonight
今宵の君を愛する心だけ

 

With each word your tenderness grows
君の優しい言葉を一つ聞くごとに
Tearing my fears apart
僕の恐れは消えていく
And that laugh
そして君の笑顔
That Wrinkled your nose
鼻にしわを寄せる表情が
Touches my foolish heart
僕の心の糸を震わせるんだ

 

Lovely, never never change
愛しい君よ、ずっと今のまま
Keep that breathless charm
息をのむようなその魅力を
Won't you please arrange it
決して変えないで
'Cause I love you
僕が愛しているのは
Just the way you look tonight
今宵の素敵な君だけだから

 


元来ポピュラー色の強い作品なので、このジャンルおよびロック界においてスタンダードナンバーとして近年まで綿々と歌い継がれてきている(ようだ)が、上に述べた通り、作品としての出来とともに世に出た直後から脚光を浴びたことも相俟って、ジャズの世界においても当初から少なからぬビッグネームに取り上げられた。

 

ここではその中から、ジャズのテイストに満ちたパフォーマンスをいつものように二つご紹介しよう。

 

アステアのオリジナル・パフォーマンスも併せ、是非聴き比べてみて頂きたい。

 

https://www.youtube.com/watch?v=De_xthmIUO8

https://www.youtube.com/watch?v=BVjakWUFY7g