ジャズ入門 on the net|JAZZの名曲・名演を動画で試聴

Jazzの歴史から代表的アーティスト、名演奏、スタンダードナンバー、おすすめの名盤まで―YouTubeの動画を視聴しながら、ジャズを愉しむためのツボをご紹介します。

ジャズ・レーベル(3)―リバーサイド(Riverside)

ビル・エヴァンス(p)がスコット・ラファロ(b)、ポール・モティアン(ds)と残した次の4枚のアルバムは、「リバーサイド4部作」と呼ばれることがある。

 

・ポートレイト・イン・ ジャズ(Portrait in Jazz)
・サンデー・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード(Sunday at the Village Vanguard)
・ワルツ・フォー・デビィ(Waltz for Debby)
・エクスプロレーションズ(Explorations)

 

この「リバーサイド」もジャズのレーベル名で、先にご紹介したブルーノート、プレスティッジと合わせ、モダン・ジャズの3大レーベルと称される名門だ。

 

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リバーサイド・レーベルは1953年、ニューヨークで誕生した。

 

創設したのはビル・グラウアーとオリン・キープニュース。

 

二人はコロンビア大学の同級で、大学を卒業した後、グラウアーはレコード・コレクター向けの月刊誌"Record Changer"の発行に携わり、その後を追うようにしてキープニュースも同誌に身を寄せるようになった。

 

そして、この"Record Changer"で数年を経た後、リバーサイド・レーベルを発足させたのである。

 

 

 

 


当初、リバーサイドはビバップ以前の古典ジャズの復刻を主に手掛けていたが、1954年、身長2mを超える文字通りの巨人ランディ・ウェストン(Randy Weston, p)の録音によりモダンジャズ・シーンへ足を踏み入れ、翌1955年にセロニアス・モンク(Thelonious Monnk, p)と契約したことを契機として、この領域への本格的進出。

 

さらに続いて、ビル・エヴァンス(Bill Evans, p)、キャノンボール・アダレイ(Cannonball Adderley, as)、ジョニー・グリフィン(Johnny Griffin, ts) 、ウエスモンゴメリー(Wes Montgomery, g)、ボビー・ティモンズ(Bobby Timmons, p)といったアーティストを見出し、彼らの作品を次々に発表してジャズ・レーベルとしての地位を確立した。

 


この発展の背景には、ミュージシャンの耳を信頼し、彼らが推すアーティストを積極的に招き入れるというこのレーベルの風土があったと言われている。

 

例えば、グリフィンはモンクによりリバーサイドに招聘されたし、アダレイはクラーク・テリー(Clark Terry, tp)によって推挙されるとともに、後には逆にブルー・ミッチェル(Blue Mitchell, tp)を見出すなどして、リバーサイドの発展に大きく貢献することになった。

 


そのリバーサイドにおけるグラウアーとキープニュースの役割は、大きく、新作のプロデュースはキープニュース、グラウアーはレーベルの財政面の管理と分かれていたが、キープニュースはさらに、自分が制作したアルバムのライナー・ノーツも手がけた。

 

これはもともと、ライナーノーツの執筆を外部に依頼するだけの経済的余裕がなかったことによる苦肉の策だったということだが、レコード制作の舞台裏まで知悉しているプロデューサーが自ら書いたライナー・ノーツには、作品誕生の背景や録音時のエピソードなども盛り込まれており、リバーサイド・レーベルの売りの一つとなった。

 


さて、ブルーノート(Blue Note)、プレスティッジら(Prestige)と競いながら、ジャズシーンにおいて重要な役割を演じたリバーサイドだが、レーベルの財政を一手に担っていたグラウアーが1963年に世を去ったことで、翌年、その活動に一旦終止符を打つ。

 

しかし1972年、リバーサイドもプレスティッジに続いてファンタジー・レコードに吸収され、同レーベルが残した300点あまりの貴重な遺産は、現在も折に触れて復刻が繰り返されている。

 

我々にとってはこの上ない恩恵と言うべきだろう。

 


キャノンボール・アダレイ「ノウ・ホワット・アイ・ミーン(Know What I Mean?)」

Know What I Mean


ウェス・モンゴメリー「ジ・インクレディブル・ジャズ・ギター(The Incredible Jazz Guitar)」

The Incredible Jazz Guitar


ブルー・ミッチェル「ブルーズ・ムーズ(Blue's Moods)」

Blue's Moods

 

 

 

 

イッツ・オンリー・ア・ペーパームーン(It's Only A Paper Moon)

以下の記事において、タイトルに「星(star)」という単語を含むスタンダードナンバーの多いことを述べたが、それ以上に目立つのが、同じく夜空を飾る、我々にもっとも近しいともいえる天体、月を冠した曲である。

 

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いま、思い付くままに挙げてみても、Moonlight Serenade, Moonglow, Polka Dots And Moonbeams, How High The Moon, Fly Me To The Moon, The Moon Was Yellow, Moon River, Old Devil Moon, Blue Moon, Moonlight In Vermont, ……をはじめとして、まだまだ思い浮かぶほどだ。

 

そんな中から、今回は「イッツ・オンリー・ア・ペーパームーン(It's Only A Paper Moon)」をご紹介しよう。

 

 

 

 


この曲もやはりブロードウェイの舞台「ザ・グレート・マグー(The Great Magoo)」のために書かれたもので、元々は"If You Believed in Me"というタイトルだったらしい。

 

作曲はハロルド・アーレン(Harold Arlen)、作詞はエドガー・イップ・ハーバーグ(Edgar "Yip" Harburg)とビリー・ローズ(Billy Rose)の共作、1932年のことだが、舞台が失敗に終わったこともあって、挿入歌も話題とはならなかった。

 

しかし、続いて1933年、今度は映画「当って砕けろ(Take a Chance)」で使われ、ポール・ホワイトマン楽団の演奏とペギー・ヒーリーの歌唱を録ったレコードが人気を博し、さらにその後、エラ・フィッツジェラルドナット・キング・コール・トリオという人気アーティストによる録音が、同曲をスタンダードナンバーの地位へ押し上げたのである。

 

そして1973年には、ジョー・デヴィッド・ブラウンの小説「アディ・プレイ(Addie Pray)」を原作とするピーター・ボグダノビッチ監督による映画「ペーパー・ムーン(Paper Moon)」において、ポール・ホワイトマン楽団の演奏が再び取り上げられたことで、一般にも広く知られることとなった。

 

この点については、同映画でライアン・オニール、テータム・オニール父娘が共演し、さらに翌1974年の第46回アカデミー賞において、テータムが史上最年少(当時10歳)で助演女優賞を得た話題性も与っているのかもしれない。

 


ではここで、いつものように拙訳を付して詞を引用させて頂こう。

 

I never feel a thing is real

現実のこととは思えない

When I'm away from you

あなたから離れていると

Out of your embrace

抱きしめてもらってないと

The world's a temporary parking place

この世は一時駐車場みたい 

 

Mmm, mm, mm, mm

らーら、ら、ら、ら

A bubble for a minute

束の間のシャボン玉

Mmm, mm, mm, mm

らーら、ら、ら、ら

You smile, the bubble has a rainbow in it

あなたの微笑はシャボン玉の中の虹

 

 

Say, it's only a paper moon

そう、それはただの紙のお月様

Sailing over a cardboard sea

厚紙の海の上を滑っていく

But it wouldn't be make-believe

でも決してまやかしではないの

If you believed in me

わたしのことを信じてくれれば

 

Yes, it's only a canvas sky

そう、それはただの布地の空

Hanging over a muslin tree

モスリンの木の上にかかる

But it wouldn't be make-believe

でも決してまやかしではないの

If you believed in me

わたしのことを信じてくれれば

 

Without your love

あなたの愛がなければ

It's a honky-tonk parade

それはただの騒々しいパレード

Without your love

あなたの愛がなければ

It's a melody played in a penny arcade

それは単なる遊園地のメロディ

 

It's a Barnum and Bailey world

それはあのサーカスの世界

Just as phony as it can be

同じように演出されたもの

But it wouldn't be make-believe

でも決してまやかしではないの

If you believed in me

わたしのことを信じてくれれば

 

 

映画「ペーパー・ムーン」の中では、かつて関係のあった女性の娘アディ(テータム)を、嫌々ながら親類の家まで送り届けることとなったペテン師モーゼ(ライアン)が、次第に彼女との絆を深めていくさまが描かれ、これがまず上の詞と重なるとともに、確かテータム・オニールが紙の月に接するシーンもあったように思う。

 


最後にヴォーカルとインストゥルメンタル、それぞれのパフォーマンスを一つずつご紹介して本稿を閉じよう。

 

https://www.youtube.com/watch?v=2_uwE0WkM7Y

https://www.youtube.com/watch?v=agWKvXMCTL4