ジャズ on the net|JAZZの名曲・名演を動画で試聴

Jazzの歴史から代表的アーティスト、名演奏、スタンダードナンバー、おすすめの名盤まで―YouTubeの動画を視聴しながら、ジャズを愉しむためのツボをご紹介します。

スウィングしなけりゃ意味がない(It Don't Mean a Thing, If It Ain't Got That Swing)

これまで取り上げたスタンダードナンバー・名曲のほとんどが、図らずもミュージカルをはじめとする舞台や映画といったより広いショービジネスの領域から生まれたものとなってしまったが、もちろん音楽の世界に芽生え育って大輪の花を咲かせた作品も数多い。

 

その一つとして、今回は「スウィングしなけりゃ意味がない(It Don't Mean a Thing, If It Ain't Got That Swing)」をご紹介しよう。

 


これを作曲したのは、ジャズを語るにおいてその名の出ないことはまずないとも言えるデューク・エリントン(Duke Ellington)で、1931年、シカゴのバー・レストラン「リンカーン・タヴァーン(Lincoln Tavern)」へ出演した際、その休憩時間に一気呵成にものしたと伝えられている。

 

一方の詞については、当時エリントンのマネージャーを務めていたアーヴィング・ミルズ(Irving Mills)の名が冠されているが、どうもこの人物は自らの名声や富を増すためにエリントンの才能を利用したり、さらに人に書かせた詞を自分の作としてしまったりと、色々批判を免れないようで、「スウィングしなけりゃ意味がない」においても後者の疑いがあるらしい。

 

 

 

 


ところで、"It Don't Mean a Thing, If It Ain't Got That Swing"なる原題を目(あるいは耳)にして「おかしい」と思わない方は、英語の文法上の誤りに気付かないほどの無頓着か、もしくは逆にこれが俗語的表現であるとの認識を具える碩学かのどちらかだろう。

 


このタイトルの由来に関してはいくつかの有名な説がある。

 

一つは、エリントン楽団の初代トランペッターとして、1920年代に主にコットン・クラブで活躍したジェイムズ・"ババー"・マイリー(James "Bubber" Miley)の口癖だったというものだが、これに対して、そのマイリーの跡を継いだクーティー・ウィリアムス(Cootie Williams)は、自身の案出した言葉であると述べている。

 

加えて、エリントンのパフォーマンスに対する客の反応が悪いことに業を煮やして上のミルズの口走ったものとも言われ、これらのどれが本当なのか、あるいは他に真の由来があるのかは定かでないようだ。

 

ともあれ、これがジャズにおける正に格言ともいえるタイトルであることは間違いなく、以後多くのアーティストの心を惹きつけ、取り上げられることになったのは宜なるかな、である。

 

 

 

 


このように玄人受けしたことに加え、エリントンがコットン・クラブのコーラス・ガールの中から見出して間もないアイヴィー・アンダーソン(Ivie Anderson, vo)に歌わせた録音が全米6位というヒット作となり、広く世に知られる存在ともなったのである。

 


ではここで、いつも通り拙訳を付した詞をお目汚しとしよう。

 

<Verse>
What good is melody, what good is music
心地よい調べか、的確な節か
If it ain't possessin' something sweet?
何か欠けてる、大事なものが
Nah, it ain't the melody and it ain't the music
いや違う、調べではないし、節でもない
There's something else that makes this tune complete
この曲を完全なものにするのは他の何かだ

 

<Chorus>
Yes, it don't mean a thing, if it ain't got that swing
ああ、スウィングしなけりゃ意味がないんだ
Well, it don't mean a thing, all you got to do is sing
そう、意味がないんだ、歌いたくならないなら
It makes no difference if it's sweet or hot
甘くても辛くても関係ないのさ
Just give that rhythm everything you got
大事なのはただ魂をリズムを込めること

 

Yes, it don't mean a thing, if it ain't got that swing
ああ、スウィングしなけりゃ意味がないんだ
It don't mean a thing, don't mean a thing if it ain't got that swing
意味がない、意味がない、もしスウィングしないなら
I said, it don't mean a thing, if it ain't got that swing
言っただろう、スウィングしなけりゃ意味がないって
Nah, it makes no difference if it's sweet or hot
違うんだ、甘くても辛くても関係ないのさ
Just give that rhythm everything you got
大事なのはただ魂をリズムを込めること
Don't mean a thing, boy, if it ain't that a swing
そうさ、スウィングしなけりゃ意味がないんだ

 

そして最後は名演奏を二つご紹介するが、他にもエリントンを敬愛するアーティストによる優れたパフォーマンスが数多あるので、ぜひご自身でも探してみて頂きたい。

 

https://www.youtube.com/watch?v=w4IdHa_6SA4

https://www.youtube.com/watch?v=4ufDQ11H8RI

 

 

 

 

ジャズ・レーベル(4)―ヴァーヴ(Verve)

今回は「ジャズ・レーベル(4)」として、先の3大レーベルに比べるといくぶん知名度は低いものの、やはりジャズシーンにおいて忘れることのできない「ヴァーヴ(Verve)」をご紹介したい。

 


1944年、ロサンゼルスのフィルハーモニック・オーディトリアムというクラシック音楽のホールにおいて、J.A.T.P.(ジャズ・アット・ザ・フィルハーモニック)というジャズのコンサートが開催された。

 

J.A.T.P.を企画・実現したのは、当時まだ20代半ばであったノーマン・グランツ(Norman Granz)で、このグランツが、後にジャズの名門レーベル「ヴァーヴ(Verve)」を設立することになるのである。

 


グランツは、J.A.T.P.を一期一会のコンサートとして行うだけではなく、その演奏を録音して後世に残すというアイデアを胸に抱いていた。

 

そして、それを実行に移した成果が、ジャズ・レコード史における最初のライブ盤として世に送り出されたのである。

 

 

 

 


その後、1951年になると、グランツは自らのレーベル「クレフ(Clef)」を設立し、シリーズとして続けられたJ.A.T.P.のライブ盤をリリースするとともに、新作のスタジオ・レコーディングも開始。

 

オスカー・ピーターソン(Oscar Peterson, p)、アート・テイタム(Art Tatum, p)、チャーリー・パーカー(Charlie Parker, as)、エラ・フィッツジェラルド(Ella Fitzgerald, vo)、バド・パウエル(Bud Powell, p)といった、ジャズシーンにおけるビッグ・ネームの作品により、次第に名声を確立していった。

 


次いで1953年、グランツは自分の名前に因んだ「ノーグラン(Norgran)」を立ち上げ、かつてクレフで制作した作品もこのノーグランで順次再発していった上、1956年にはまたもや新しいレーベルを設立する。

 

これが「ヴァーヴ(Verve)」で、グランツにその新設を決意させたのは、彼がマネージメントを行ってきたジャズ・ボーカルの女王、エラ・フィッツジェラルドとの専属契約を締結することができたためといわれている。

 

 

 

 


ヴァーヴは、クレフとノーグランで制作された約250枚の作品を再発売するとともに、エラをはじめとする大物アーティストたちのレコーディングも引き続き積極的に行なったことで、1950年代の末にはジャズシーン最大のアルバム数を誇るレーベルに成長した。

 

1960年にはMGMに売却されてグランツの手を離れたが、クリード・テイラーなどのプロデュースの下、引き続き数々の名作を生み出していく。

 

特に、スタン・ゲッツ(Stan Getz, ts)を中心とした一連のボサ・ノヴァ作品は世界中でベストセラーを記録し、さらにビル・エヴァンス(Bill Evans, p)やジミー・スミス(Jimmy Smith, org)などのアーティストも獲得して名門ジャズ・レーベルとしての地位を完全に確立したのである。

 


この業界の例に漏れず、1972年にMGM・ヴァーヴは現在のポリグラムに吸収され、しばらく新作の制作は中断したものの、1980年代の末からはレコーディングを再開し、現在は親会社のユニバーサル・ミュージックが所有するインパルスやGRPといったレーベルも吸収して精力的な制作活動を展開している。

 


そんなヴァーヴ・レーベルを語る際に、グランツとともに忘れてはならない人物がいる。

 

それはイラストレーターのデビッド・ストーン・マーティン(David Stone Martin)。

 

ヴァーヴ・レーベルの作品に芸術的な格調が感じられるのは、マーティンの手になるカバーアートによるところが大きい。

 


最後に、上に挙げた三つのレーベルからリリースされたアルバムを一枚ずつご紹介して本稿を閉じよう。

 


チャーリー・パーカーディジー・ガレスピーバード&ディズ(Bird And Diz)

Bird And Diz


バド・パウエルピアノ・インタープリテーションズ・バイ・バド・パウエル(Piano Interpretations by Bud Powell)

Piano Interpretations by Bud Powell


エラ・フィッツジェラルドマック・ザ・ナイフ(Mack the Knife-Ella in Berlin)

Ella in Berlin