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身も心も(Body And Soul)

タイトルを目にしただけで、「聴いてみたい」と食指を動かされる曲がある。

 

「Body And Soul(身も心も)」はその最たるものの一つだろう。

 

今般取り上げるのは、ジャズのスタンダードナンバーとしての同曲だが、実際、全く同じタイトルを冠したものがいくつもあるようだ。

 


「Body And Soul(身も心も)」の作曲者、ジョニー・グリーン(Johnny Green)はハーヴァード大学を出た俊英で、はじめウォール街に職を得たものの、音楽に対する情熱を抑えがたくこの世界へ舵を切り直したという人物である。

 

そのグリーンが、イギリスの女優・歌手ガートルード・ローレンス(Gertrude Lawrence)の依頼を受け、エドワード・ハイマン(Edward Heyman)、ロバート・サワー(Robert Sour)という作詞家二人と協力して1930年に書き上げ、これをローレンスがラジオで紹介するとロンドンの聴衆を魅了し、瞬く間に広く人気を博すこととなった。

 


ところで、同曲のクレジットには、現在、作詞家として上の二人の他にさらに二人の名の見られることもあるが、それは以下の事情に因っている。

 

まず、イギリスでの契約に係わり、ジャック・ヒルトン楽団へレコーディングを斡旋してヒットのきっかけを作ったイギリスの作詞家フランク・アイトン(Frank Eyton)の名が、曲の成立には直接関係ないながら、クレジットに付加された。

 

そして夏になると、イギリスからさらに欧州大陸にまで人気の広がった同曲をアメリカへも――との目論見が当然生じ、アーサー・シュワルツ(Arthur Schwartz)とハワード・ディーツ(Howard Dietz)によるレヴュー「Three's a Crowd」で新進の女性歌手リビー・ホルマン(Libby Holman)に歌わせようとしたのだが、彼女はこれがお気に召さず、ディーツに対して歌詞の変更を求めたため、原作詞者の二人が手を入れたりして何とかオープニングを迎えることができたという経緯があり、ここでディーツもまた作詞者として名を連ねることになったらしい。

 

 

 

 


それと同時に、「Body And Soul(身も心も)」は、多くの作詞者を持つと同時に、その歌詞にもいくつかのバージョンが生まれることとなったのである。

 

ここで、その一つをご紹介しよう。

 

[Verse]

 

You're making me blue
あなたはわたしの心を暗くする
All that you do
あなたのするすべてが
Seems unfair
不当なことに思える
You try not to hear
わたしの願いをあなたは
Turn a deaf ear
聞こうともしないし
To my prayer
耳さえ向けない
It seems you don't want to see
わたしに対してしていることから
What you are doing to me
目を背けているみたい
My arms are waiting to caress you
わたしの腕はあなたを愛撫しようと
And to my heart they long to press you, sweet heart
愛するあなたを、心から抱きしめようとしているのに


[Chorus]

 

My days have grown so lonely
わたしの寂しさは日々募る
For you I sigh, for you dear only
あなたを思って、愛しいあなただけを
Why haven't you seen it
なぜわかってくれないの
I'm all for you body and soul
身も心もあなたのものと

 

I spend my days in longin'
わたしは毎日恋焦がれている
And wondering why it's me you're wronging
それなのになぜあなたはつれないのかしら
I tell you I mean it
心から言っているのに
I'm all for you body and soul
身も心もあなたのものと

 

I can't believe it
わたしには信じられない
It's hard to conceive it
想像するのさえ難しい
That you'd turn away romance
この恋に背を向けようとしているなんて
Are you pretending
それとも振りをしているの
It looks like the ending
恋が終わってしまったような
Unless I could have one more chance to prove, dear
ねえそうなの、わたしの愛を試そうとして

 

My life a wreck you're making
わたしはあなたのせいで破滅
You know I'm yours for just the taking
いつだってあなたのものと知っている癖に
I'd gladly surrender
喜んで降伏するのに
Myself to you body and soul
身も心も捧げるのに

 


なお、上に述べた通り、同曲は公開直後から順調に知名度を上げ、「Three's a Crowd」の他、1946年には「The Man I Love」、さらに翌年の「Body And Soul」という二つの映画にも援用された。

 

また、ジャズ・アーティストにも早くから注目され、コールマン・ホーキンス(Coleman Hawkins, ts)による1939年のパフォーマンスで斯界における盤石の地位を確立し、以後数多の才能による多彩な音風景が描かれることとなったのである。

 

https://www.youtube.com/watch?v=zUFg6HvljDE

https://www.youtube.com/watch?v=03f4rcZobNs