ジャズ on the net|JAZZの名曲・名演を動画で試聴

Jazzの歴史から代表的アーティスト、名演奏、スタンダードナンバー、おすすめの名盤まで―YouTubeの動画を視聴しながら、ジャズを愉しむためのツボをご紹介します。

枯葉(Autumn Leaves)

平地ではまだ夏の名残が色濃いかもしれないが、山の上の木々は既にだいぶ色づき、時折散り落ちる葉も見え始めている。

 

この季節、聴かずにはいられない曲がある――と言えば、もうお分かりだろう。

 

そう、数あるスタンダードナンバーの中でも、最も多くのアーティストに取り上げられ、延いては一般の知名度も群を抜いて高いものの一つ、「枯葉(Autumn Leaves)」である。

 


「枯葉(Autumn Leaves)」の原曲は、1945年、ハンガリー出身のユダヤ人作曲家ジョゼフ・コズマが、ナチスの迫害を逃れて移り住んだパリにおいて、バレエ「Rendez-vous=あいびき」のために書いたものである。

 

そして翌1946年、このバレエを元にしたマルセル・カルネ監督の映画「夜の門(Les Portes de la Nuit)」でも用いられることとなり、その脚本を担当したジャック・プレヴェールの手で詞が付され、出演したイヴ・モンタンにより最初に歌われた。

 

その後、知性派シャンソン歌手として名高いジュリエット・グレコがこれを歌ったことで一般に知られるようになり、さらにコラ・ヴォケール、エディット・ピアフらによる歌唱を通じ、先ずはシャンソンにおけるスタンダードナンバーとしての地歩を固めたのである。

 

なお、フランス語のオリジナル・タイトルは"Les Feuilles mortes"、すなわち「死んだ葉」で、「枯葉」と意味合いは通じているものの、こちらが色褪せ干からびながら枝に付いているものも含むのに対し、"Les Feuilles mortes"の方は地面に散り落ちた葉だけを指し、完全に命の糸を絶たれた状態を示すようだ。

 

 

 

 


大西洋の向こうのアメリカへは1949年に渡り、この曲を世に問おうとしたキャピトル・レコードの創立者でもあった作詞家ジョニー・マーサーによって英語の詞が書かれて、タイトルも「枯葉(Autumn Leaves)」としてリリースされた。

 

ジャズにおいては、1952年にスタン・ゲッツが最初にこれをレコードへ吹き込んだのを皮切りに、冒頭でも述べたようにさまざまなアーティストに好んで取り上げられ、まさに百花繚乱・千紫万紅と言うべき現在の様相を呈するに至ったのである。

 


ここで例によって、拙訳を付して詞を引用させて頂こうと思うが、当方遺憾ながら仏語の素養が十分でないため、英詞に基づくこととした。

 

原詞において極めて重要かつ味わい深いものでありながら、アメリカ版の楽曲において省略されてしまったVerse(歌の前説)の部分は、ジェフリー・パーソンズの英訳を元にご紹介する。

 

<Verse>

Autumn leaves fall and are swept out of sight

枯葉が舞い落ち、そして視界から消えてゆく

The words that you said have come true

あなたの口にした言葉が現実になるなんて

Autumn leaves fall and are swept out of sight

枯葉が舞い落ち、そして視界から消えてゆく

So are the mem'ries of love that we knew

そう、わたしたちの愛の記憶もそれと同じ

 

The wind of forgetfulness blows them,

忘却という名の風に吹かれて

into a night of regret

悔恨の闇へと落ちていく

The song you would so often sing

あなたがよく口ずさんでいた歌も

Is echoing, echoing, yet...

ずっとずっとこだましながら…

 

<Chorus>

The falling leaves drift by the window

窓のすぐ外をひらひらと散り落ちる枯葉

The autumn leaves of red and gold

赤と黄に染まったその秋の葉に

 

I see your lips, the summer kisses

あなたの唇、夏の日の口づけを想う

The sun-burned hands I used to hold...

よく握り合った日焼けした手とともに…

 

Since you went away

あなたが去ってからは

The days grow long

一日が長くなった

And soon I'll hear

そして聞こえてくるの

Old winter's song

あの古い冬の歌が

 

But I miss you most of all my darling

最愛のあなたを失った悲しみが胸に痛い

When autumn leaves start to fall...

枯れ葉の散り始めるこの季節には...

 

 

ジャズに名曲はない、あるのは名演奏だけだ――との至言があるが、これは無論、前半と後半を独立に捉えるべきではなく、「ジャズにおいて重要なのは、曲そのものではない、それをどのように料理し、音として具現するかである」と解釈すべきだろう。

 

そして言うまでもなく、名曲であればそれだけ、アーティストのインスピレーションを刺激して名演奏の生みだされる率も高くなるはずだ。

 

「枯葉(Autumn Leaves)」は間違いなくその代表例であり、名演奏も枚挙に暇なく、どれをご紹介すべきか悩ましことこの上ないのだが、ここはもう、敢えて有名中の有名どころを2つ、挙げることにした。

 

"Autumn Leaves"というタイトルをお好きなアーティストの名前と共に検索頂けば、そのパフォーマンスも見つかることが多いと思う。

 

Cannonball Adderley - Autumn Leaves - YouTube

Bill Evans Trio - Autumn Leaves (Take 2) - YouTube