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ホワイト・クリスマス(White Christmas)

近年、この時季に街中でクリスマス・ソングをあまり耳にしなくなったように思う。

 

これは一つに、ハロウィンの方へ人々の目が移ったことに加え、未だ収束の見えないコロナウィルスの蔓延状況も大きく関与しているに違いない。

 

個人的には、徒にクリスマスを持て囃して無節操に燥ぎ騒ぐような風潮には眉を顰めざるを得ないのだが、その風情を静かに味わう気持ちは持ち合わせているので、このところ些かの物寂しさを覚える。

 

 

それならハロウィンを――といっても、単に私の無知によるのかもしれないけれど、こちらに関した音楽はあまりないように思われ、たとえあってもそれらは恐らくこの祭りが隆盛になってから生まれたものであろうから、コンテンポラリーな事物に対してあまり食指の動かない者には、所詮猫に小判・兎に祭文だろう。

 


そんな寥々たる気分を払拭しようとの思いもあり、今回は時流に逆らい(?)クリスマスに因んだ名曲を取り上げたい。

 

ホワイト・クリスマス(White Christmas)」がそれである。

 

 

 

 


穿った見方をすれば大衆受け狙いのありありと窺えるタイトルからも推されるように、この曲もやはり1942年に公開されたアメリカ映画"Holiday Inn"のために書かれたもので、作詞・作曲とも、ベラルーシに生まれて幼い時に家族とともにアメリカへ移り定住したアーヴィング・バーリン(Irving Berlin)が手掛けた。

 

この映画は、そのタイトル通り祝日だけ開くホテルを舞台として、あるクリスマス・イヴから翌年の大晦日までの、アメリカの祝祭日に生じたドラマを描いた作品で、ビング・クロスビー(Bing Crosby)、フレッド・アステア(Fred Astaire)という二大スターの競演が注目を集めたこともあり大成功を収めた。

 

同時に、劇中曲の一つでクロスビーの歌う「ホワイト・クリスマス(White Christmas)」もまた、全米のヒットチャートにおいて1942年10月から11週連続でトップに君臨するヒットとなったのである。

 


ところで、この"Holiday Inn"には「スイング・ホテル」なる邦題が冠されているのだけれど、これに「何だかなァ」と違和感を覚えるのは、独り私だけではないのではなかろうか……

 


ではここで、いつものようにその詞を拙訳を付してご紹介しよう。

 

I'm dreaming of a white Christmas
夢に見るのは真っ白な雪のクリスマス
Just like the ones I used to know
ちょうどあの懐かしい頃と同じような
Where the treetops glisten
樹々の梢はきらきらと輝き
and children listen
子どもたちは耳を澄ます
To hear sleigh bells in the snow
雪の中を駆ける橇の鈴の音に

 

I'm dreaming of a white Christmas
夢に見るのは真っ白な雪のクリスマス
With every Christmas card I write
クリスマスカードにはどれもこう書く
May your days be merry and bright
あなたの毎日が明るく愉しく
And may all your Christmases be white
そしてクリスマスは白く染まるようにと

 


極めてシンプルながらクリスマスの情趣に溢れた詞に、実に親しみやすい曲が伴っているのだから、広く人気を博するのも宜なるかな、と言えよう。

 


そのヒットにあやかって二匹目の泥鰌を狙ったのだろう、後に映画「ホワイト・クリスマス(White Christmas)」が制作されて1954年に封切られた。

 

ここで音楽を担当したのは、リチャード・ロジャース(Richard Rodgers)とオスカー・ハマースタイン2世(Oscar HammersteinⅡ)というヒットメーカーだが、タイトル曲たる「ホワイト・クリスマス」は新たに起こすことなく、先達バーリンに敬意を表してその作品をそのまま用いている。

 

https://www.youtube.com/watch?v=rsbHQv5nzB0

https://www.youtube.com/watch?v=654RwuFcplU