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ニューヨークの秋(Autumn in New York)

今年は梅雨明け後もぐずついた空とじっとりとした空気が長く続き、少なからず気を塞がれていたが、ここへきて漸く本来の秋らしい陽気に変わってきた。

 

そうなると先の「枯葉」と並んで聴きたくなる一曲に、作詞・作曲いずれもヴァーノン・デューク(Vernon Duke1903年10月10日-1969年1月16日)による「ニューヨークの秋(Autumn in New York)」がある。

 

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もっとも、当地は山の上で、同曲に謳われるモチーフとは、単に季節が一致しているのみで、その他の共通項はまったくないのだが、そのわずかな接点から大きな共感を生起してくれるということが、名曲、名演たる所以なのだろう。

 


さて、同曲を書いたヴァーノン・デュークは、その本名ヴラジーミル・アレクサンドロヴィチ・ドゥケーリスキーから窺われる通りロシア人で、祖母はロシア帝国の王女という貴族の家柄に生まれ、学び舎のキエフ音楽院ではウラディーミル・ホロヴィッツと同級だった。

 

しかし時悪しくもロシア革命が勃発したため、その難を逃れてイスタンブールに移り、さらに1921年にはアメリカへ亡命。

 

やがて26歳の時にガーシュインにその才能を見出されてブロードウェイの世界へ進出したが、かつてプロコフィエフから拝した、クラシック音楽との繋がりは決して断ち切ることのないように――との教えは生涯忘れなかった。

 

これはデュークの作品の随所に如実に見て取ることができるが、却ってこのために、いわゆる大衆受けという面では大きな果実は手にできなかったように思われる。

 

 

 

 


「ニューヨークの秋」もその例外ではなく、1934年にものしたこれをブロードウェイのプロデューサー、マレイ・アンダーソンに提示したところ、アンダーソンのミュージカル「Thumbs Up!」に採用されはしたものの、ショー自体はともあれ曲の方はほとんど話題にはならず、1949年にある程度の注目を得たのも、これを歌ったフランク・シナトラの人気に負うところが大きかったと言えそうだ。

 

しかしその後、チャーリー・パーカー(Charlie Parker, as)、モダン・ジャズ・カルテット(Modern Jazz Quartet)、ビリー・ホリデイ(Billie Holiday, vo)といったジャズ界のビッグ・ネームに相次いで取り上げられ、このジャンルのスタンダードナンバーとしての地位を確立するに至ったのである。

 


因みに、デュークは1932年、「パリの四月(April In Paris)」を作曲しており、「ニューヨークの秋」を書くに際しては、これとの対照を少なからず意識したのではなかろうか。

 

 

 

 


最後に、「ニューヨークの秋(Autumn in New York)」の充実した歌詞を拙訳とともに、さらにそれぞれ固有の味わいを具えたパフォーマンスを二つご紹介して本稿を閉じよう。

 

<Verse>
It's time to end my lonely holiday
寂しい休日はもう終わり
And bid the country a hasty farewell.
田舎には別れを告げる時。
So on this gray and melancholy day
そしてこの暗く陰鬱な日に
I'll move to a Manhattan hotel.
マンハッタンのホテルへ向かおう。
I'll dispose of my rose-colored chattels
想い出に満ちた家も家具も捨て去り
And prepare for my share of adventures and battles.
これから始まる冒険と戦いに備えよう。
Here on the twenty-seventh floor,
ここ摩天楼の二十七階から、
Looking down on the city I hate
憎らしいのに憧れる街を
And adore!    
見下ろしながら。

 

<Refrain 1>
Autumn in New York,
ニューヨークの秋、
Why does it seem so inviting?
なぜこれほど魅力的なのか?
Autumn in NewYork,
ニューヨークの秋、
It spells the thrill of first-nighting.
舞台の初日のように胸がときめく。

 

Glittering crowds and shimmering clouds
着飾った人々や空にきらめく雲を
In canyons of steel,
鋼鉄の峡谷で眺めていると、
They're making me feel
不思議と安らいだ
I'm home.
気持ちになる。

 

It's Autumn in New York
ニューヨークの秋
That brings the promise of new love;
それは新しい恋の到来を約束する;
Autumn in New York
でもその秋には
Is often mingled with pain.
往々にして痛みが伴う。

 

Dreamers with empty hands
何も持たない夢想家が
may sigh for exotic lands;
この魔法の街で溜め息を吐く;
It's Autumn in NewYork,
それがニューヨークの秋、
it's good to live it again.
至福の想いを新たにする。

 

<Refrain 2>
Autumn in New York,
ニューヨークの秋、
The gleaming rooftops at sundown.
摩天楼の屋上が入り日に輝く。
Autumn in New York,
ニューヨークの秋、
It lifts you up when you're rundown.
それは疲れ果てたあなたを勇気づけ、
Jaded roues and gay divorces
リッツホテルで昼食を摂る
Who lunch at the Ritz,
裕福な放蕩者たちに
Will tell that "it's
「素敵だな!」
Divine!"
と言わしめる。

 

This Autumn in New York
このニューヨークの秋は、
Transforms the slums into Mayfair;
スラム街も高級住宅地に変える;
Autumn in New York,
ニューヨークの秋に、
You'll need no castle in Spain
スペインの城などいらない。

 

Lovers that bless the dark
セントラル・パークのベンチで
On benches in Central Park
恋人たちは夕暮れを愛で
Greet Autumn in New York,
ニューヨークの秋を迎えて、
It's good to live it again.    
至福の想いを新たにする。

 

 

https://www.youtube.com/watch?v=FUT0EvnsV4I

https://www.youtube.com/watch?v=r1E31yVClW4