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ピアノ(5)―ソニー・クラーク(Sonny Clark)

先の「ジャズ・レーベル(1)―ブルーノート」で、同レーベルらしい魅惑的なカヴァーを纏ったアルバム例として「クール・ストラッティン(Cool Struttin')」を挙げたが、今回はそのリーダー・アーティストであるピアニスト、ソニー・クラーク(Sonny Clark、1931年7月21日-1963年1月13日)をご紹介しよう。

 

Sonny Clark

 


幼い時からピアノに接していたクラークは、1951年にサンフランシスコでピアニストとしての道を歩み出し、スタン・ゲッツ(Stan Getz, ts)、アニタ・オデイ(Anita O'Day, vo)との共演後、1954年から56年にかけてはクラリネット奏者バディ・デフランコ(Buddy DeFranco)のカルテットに参加していくつかの録音を残すとともに、1954年にはビリー・ホリデイ(Billie Holiday, vo)の欧州公演にも同行した。

 

そして1957年、活動の拠点をニュー・ヨークへ移してソニー・ロリンズ(Sonny Rollins, ts)、チャールズ・ミンガス(Charles Mingus, b)のセッションに参加。

 

さらにブルーノート・レコードと専属契約を結び、早くも同年、「Dial "S" for Sonny」「Cool Struttin'」「Sonny's Crib」という三枚のリーダー作をものした。

 

その一方、西海岸時代同様、サイドマンとしての活動も活発で、ハンク・モブレー(Hank Mobley, ts)、リー・モーガン(Lee Morgan, tp)、カーティス・フラー(Curtis Fuller, tb)、ジャッキー・マクリーン(Jackie McLean, as)などのアルバムにも、クラークの名を見ることができる。

 

 

 


この略歴から類推されるように、クラークは自己を強烈に主張するタイプではなく、どちらかと言えば、共演者の個性を尊重し、それらを上手く総括しながら、同時にそこに一筆の、しかし印象的な自らの色合いを付加するアーティストと言えよう。

 


クラークのプレイスタイルはバド・パウエル(Bud Powell, p)の流れを汲むものだが、無論その単なるコピーではなく、粒立ちのはっきりした硬質な音で織りなす端正なフレージングに、その特質を見ることができる。

 

と同時に、諦観と哀愁との間を行き来するような情調の表現も大きな魅力であり、これらの光彩を折に触れて描き添える能力こそ、数多の優れたアーティストたちがクラークを重用した最大の理由であろう。

 

白人ミュージシャンとの共演が目立つのも、この辺りに因を求められるかもしれない。

 


なお、日本においては大きな人気を博しているクラークだが、本国アメリカではさして耳目を集める存在ではなかったらしい。

 

トランペッターのケニー・ドーハム(Kenny Dorham)もこの点同じで、そういえば両者には共通する味わいがあるようにも思われる。

 


そんなクラークは、冒頭に記した生没年が教える通り、32歳を迎えることなく他界している。

 

死因は、スコット・ラファロ(Scott LaFaro, b)やクリフォード・ブラウン(Clifford Brown, tp)のような事故ではなく、ヘロインの過剰摂取による心臓発作だった。

 


降っても晴れても(Come Rain Or Come Shine)