トリオ―ジャズの基本形―
「ジャズ on the net」として、さて何から書くのがよいかとつらつら考えたが、まず初めに、何回かに亘って、ジャズにおける代表的な演奏形態についてご紹介することにした。
今回はその一回目「トリオ(Trio)」。
トリオとは、三重奏、すなわち3つの楽器による演奏形態のことで、楽曲によって使用楽器がほぼ固定しているクラシック音楽の世界では、「ピアノ・トリオ」、「フルート・トリオ」のように、中心となる楽器を冠した形での名称が、曲の種別として一般的に用いられることはご存じかと思う。
しかしながら、同一の曲がアーティストの裁量で変幻自在に料理され、使われる楽器もさまざまに変化するジャズでは、このような呼び方をすることはほとんどない。
各楽器は対等の立場で演奏に加わるもの――という意識が強いこともまた、影響しているに違いない。
一方、演奏者(グループ)に対し、リーダーであるアーティストの名前を付して、「ビル・エバンス・トリオ」、「ソニー・ロリンズ・カルテット」などという呼称が用いられるのは、クラシックにおいてと同様である。
さて、「トリオ」は、ジャズにおける最も基本的な演奏形態であり、現在では、ピアノ(piano)・ベース(bass)・ドラムス(drums)という編成がその代表、かつほぼこれに尽きると言ってもいいくらいだ。
実際、ピアノなし、ドラムなしのトリオが、それぞれ「ピアノレス・トリオ」、「ドラムレス・トリオ」と殊更に呼ばれる事実も、その例証であろう。
各楽器は、ドラムスがリズム(rhythm)を刻み、ピアノがメロディー(melody)を歌い、ベースは両者を有機的に結びつけるといった役割を主に担う。
しかしながら、先に書いた意識の発現として、ベースやドラムスが交代で演奏の主役となる場面もまた、ごく普通に現れるのが、ジャズの大きな特徴である。
では、この辺でトリオの名演をお聴き頂こう。
まずは、各楽器の役割を理解するのに最適な、バド・パウエル(Bud Powell)による
・カミン・アップ(Comin' Up)
(※視聴環境によっては、ベースが聴き取りにくいかもしれません)
もう一曲、異才セロニアス・モンク(Thelonious Monk)の
・ブルー・モンク(Blue Monk)
なお、同じ曲でありながら、演奏形態・奏者の違いによりその味わいが千変万化する例も、後日体験して頂く予定だ。