カルテット―オーソドックス・スタイル―
前回に続き、演奏形態について述べよう。
今回取り上げるのは、カルテット(Quartet)、すなわち四重奏。
カルテットは、ジャズにおけるもっともオーソドックスな演奏形態とも言え(特にモダン・ジャズと呼ばれる領域に限れば、そう言明してよいように思う)、ドラムス・ベース・ピアノからなるリズム・セクション(rhythm section)に、多くの場合管楽器が一つ加わった形をとる。
すなわち、前回ご紹介した(ピアノ・)トリオ+αという形となるわけだ。
加わる楽器としては、テナー・サックスをはじめとして、これより音域が高いアルト・サックスやトランペットがポピュラーだが、他にもギターやヴィブラフォンなどが役割を担うこともある。
ここで一つ注意したいのは、楽器が増えたからといって、算術的に表現が多様となるわけではないという事実だ。
カルテット編成となり、曲の表情が劇的に豊かになるケースがある一方、トリオより却って落ち着いた、一見地味なパフォーマンスが実現する例も普通に見られるのである。
しかしながら、一般に、加わった楽器がメロディーを奏でることで曲の色彩感が高まり、また、ピアノがリズムという音楽の土台をサポートする役に回ることにより、曲全体が一層堅固にまとまる傾向が強い――というのは容易にご想像頂けるだろう。
なお、カルテットにおいても、リズム・セクションが常に裏方に徹するとは限らず、ピアノ・ベース・ドラムスが機に臨み、変に応じて表舞台へ登場する。
この辺りのことを頭の片隅にでも置いて、実際に曲を聴いて頂きたい。
特に、以下初めに挙げたものは、前半、かなり長時間におよぶトリオ演奏の後、満を持した如くにテナーサックスが入るので、トリオとカルテットとの趣の相違、および、それと同時に、互いに共通した性格、関連性なども感じて頂けるのではないかと思う。
先ずはテナーの巨人ジョン・コルトレーン(John Coltrane)の吹く
・トレーニング・イン(Traneing In)
続いて、キャノンボール・アダレイ(Cannonball Adderley)のタイトなアルト・サックスで
・フウ・ケアーズ(Who Cares?)