ジャズにおける演奏形態についての解説は、今回をもってひとまず終えようと思う。
これまでは、初回のトリオからカルテット、クインテット、さらにビッグ・バンドと、次第に楽器数の多い編成へと移ってきたが、今回は反対の極にあたるソロ(Solo)とデュオ(Duo)、即ち独奏と二重奏をご紹介する。
これらを最後に持ってきた理由は、一つには、ジャズにおいてそれほど一般的な編成ではないこと、そして、少数の楽器による演奏のため、どうしても地味な印象を覚えやすく、多少親しみ難いと思われる心配があったためだ。
音楽の三要素である、リズム・メロディ・ハーモニーを、一つ、または二つの楽器のみで奏でるのだから、すべてを十全に表現することは叶わない。
これらのどこに力点を置き、さらに三要素間のバランスをどうとるかは、アーティストの感性と力量にゆだねられるわけで、その不足は演奏の価値を一気に貶めることとなる。
しかしその反面、己独り、あるいは気心の知れた二人での演奏ゆえ、音楽の緊密度という点に関しては、その保持はしやすいかもしれない。
ともあれ、優れたアーティストによるソロ・デュオには、シンプルな楽器編成であるだけに、プレイヤーが楽器の特徴をフルに活かした創造性溢れる演奏が多く、ピュアな音色を堪能できるという特徴のあることは確かだ。
絶対数は少ないものの、この編成のアルバムがほぼすべて名盤と呼んで差し支えないという事実も、この辺に理由があるのであろう。
では、実際に演奏を視聴頂こう。
まずはデュオ。
・ビル・エヴァンス(Bill Evans)&ジム・ホール(Jim Hall)「スケーティング・イン・セントラル・パーク(Skating In Central Park)」
そしてソロだが、このスタイルをとるには、音域が広く、また複数の音を同時に奏でられる楽器が望まれる。
その代表格は、いうまでもなくピアノである。
・セロニアス・モンク(Thelonious Monk)「ルビー・マイ・ディア(Ruby My Dear)」