ビッグ・バンド―スウィングの華―
ジャズの演奏形態についてのシリーズ、今回はビッグ・バンド(Big Band)を取り上げる。
これに関しては、あらためて言葉を費やす必要はないかもしれないが、文字通り大きな楽団、多種類・多数の楽器により奏されるジャズをそう呼ぶ。
ジャズの100年強の歴史をいくつかの時代に分けたとき、その中の一つ、1930年代中頃に起こったのがスウィング・ジャズだ。
この頃は、1929年の「暗黒の火曜日」を発端とする不況がようやく終わりを告げ、社会に活気が戻り始めた時にあたり、人々はリズミカルで軽快な音楽を求めていた。
そんな希求にぴったりと合致し、ダンスホールなどを通じて瞬くうちに広くアメリカの民衆の間に浸透していったのがスウィング・ジャズで、この演奏を支えたのがビッグ・バンドである。
ただ、ビッグ・バンドというとき、演奏者・楽器の数という量で捉えるだけではなく、先にご説明した「カルテット構造の有無」という質についても注目すべきだろう。
すなわち、この構造をとることなく、複数の旋律楽器が、同時に、曲全体を通じて合奏するスタイルをも、そう見做し得るように思うのだ。
もっとも、演奏者・楽器が増えれば、必然的にカルテット構造の維持は難しくなる(強いてこれに拘ると演奏時間が長大になり過ぎる)し、小編成で上の合奏形式をとるのも不自然であるから、ビッグ・バンドとはまず字義に沿ったものと見てよいことにはなる。
大体において、10人程度の編成から、ビッグ・バンドと呼ぶのが妥当であろう。
ご視聴頂く動画は、比較的小規模な編成と、正真正銘のオーケストラ(楽団)によるものを一つずつ挙げておく。
両者の微妙な味わいの相違に注目(耳)頂きたい。
・アート・ペッパー+11(Art Pepper Plus Eleven)「グルーヴィン・ハイ(Groovin' High)」
・デューク・エリントン・オーケストラ(Duke Ellington Orchestra)「コットン・クラブ・ストンプ(Cotton Club Stomp)」