クインテット、セクステット―競演の妙―
今回のテーマは、クインテット(Quintet)とセクステット(Sextet)。
前二回の記事からご想像頂けるとおり、これらはそれぞれ五重奏、六重奏を指す。
カルテットと比較して増えるのは、ほとんどの場合、旋律(melody)を担う楽器で、これがクインテットでは二つ、セクステットでは三つとなる。
しかし、これらが同時に奏されることはあまりなく、また仮にあったとしても、それは演奏のアクセントとして冒頭や末尾などに短時間だけ現れるのが普通であり、基本的に各旋律楽器は交代で曲に参加する。
すなわち、クインテットを例にとって標語的に言えば、リズムセクションを共有する二種類のカルテットで一曲を奏する形となるわけだ。
前回、カルテットを「オーソドックス・スタイル」と言った所以の一つである。
そしてこの時、次の図式に示すように、リーダーを務める奏者は最初と最後に二度登場することが多い。
カルテットA+カルテットB+カルテットA
しかし無論、これはあくまで基本的形態であり、一曲中で旋律楽器が丁々発止のやりとりを見せる例は珍しくないし、特に「競演」を謳ったセッションでは、そこがパフォーマンスの白眉となることもある。
セクステットのスタイルについてはもうおわかりかと思うが、念のため図式だけは挙げておこう。
カルテットA+カルテットB+カルテットC(+カルテットA)
ついでにもう一つ、クインテット、セクステットともに、リズムセクション構成楽器が前面に出る機会のあるのは、トリオ、カルテットと同様――と注記しておく。
さて、ここまでに何度か述べたように、各楽器の独立性の高さがジャズの大きな特徴だが、それらが会して一曲を演奏するのであるから、それぞれの旋律楽器の奏者がお互いを意識することは十分考えられ、それは当然、演奏に影響するであろう。
ここに、クインテット、セクステットの妙が醸し出されるわけだ。
最後に、クインテット、セクステットによる名演を一つずつ聴いて頂き、本稿を閉じたい。
・マイルス・デイヴィス(Miles Davis)「ダイアン(Diane)」
・ジャッキー・マクリーン(Jackie McLean)「コンファメーション(Confirmation)」