ジャズ on the net|JAZZの名曲・名演を動画で試聴

Jazzの歴史から代表的アーティスト、名演奏、スタンダードナンバー、おすすめの名盤まで―YouTubeの動画を視聴しながら、ジャズを愉しむためのツボをご紹介します。

テナーサックス(1)―スタン・ゲッツ

ジャズの代表的アーティストのご紹介に戻ろう。

 

トランペッターは三人で一先ず小休止し、テナーサックス奏者に入る。

 


アーティストを挙げる前に、老婆心ながらごく初歩的なことをいくつか述べておきたい。

 

まず、サックス(sax)とはサキソフォン(saxophone)の略称であり、ピアノ奏者はピアニスト、トランペット奏者がトランペッターと呼ばれる一方、サックス奏者のことはサキソフォニスト(saxophinist)、またはサックス(サキソフォン)・プレイヤーという。

 

もっとも、前者は日本ではあまり聞かれない。

 

次に、テナーサックスと共にアルトサックスという名前もよく耳にされることと思うが、テナー、アルトというのは、ご存じの通り音域を表す言葉で、高い音域から並べるとソプラノ、アルト、テナー(テノール)、バリトン、バスとなる。

 

これらの内、ジャズにおいてはテナー、アルトが中心となるけれども、他の音域を担うものもあり、サックスは実にバラエティに富んでいるという事実も、ご記憶いただくとよいだろう。

 


では、前置きはこれくらいにしてしてアーティストの紹介へ移ることにする。

 

 

 

 

その一人目は、スタン・ゲッツ(Stan Getz、本名:Stanley Gayetzky、1927年2月2日-1991年6月6日)。

 

Stan Getz

 

ゲッツは、幼い頃から音楽に対する関心と才能を示していたが、家が貧しかったため自分の楽器を持つことができなかったという。

 

しかし、13歳の時、初めて中古のみすぼらしいアルト・サックスを手にしたとしたと同時に飽くことのない練習に取り組み、間もなく少額ながら報酬を得ての演奏活動を開始、そして14歳になったとき、その後の人生の伴侶となるテナーサックスを自ら購入したのである。

 

ハイスクールへ通いながら(しかし欠席を重ねて)、プロとしての活動を本格化したゲッツだが、周りに釣られ、また勧められて酒を飲むようになり、バンド・リーダーであったジャック・ティーガーデン(Jack Teagarden)とともにカリフォルニアに移り住んだ頃には、その飲酒癖は危機的な状態にまで陥っていた。

 

続いて魅力的な報酬でスタン・ケントン(Stan Kenton)のバンドへ加わることができたものの、ここでは酒に加えてヘロインに溺れ、将来のモルヒネ欲しさによる武装強盗未遂事件にまで繋がってゆく。

 

このような問題を抱えながらも、ベニー・グッドマン(Benny Goodman)やウディ・ハーマン(Woody Herman)の楽団における研鑽により音楽的手腕は着実に向上し、さらにジャズ史上最高のメロディストと称されるレスター・ヤング(Lester Young)のプレイに出会ったことで、その研究の末、俗に「クール」と形容されるスタイルを確立したのである。

 

その後、スウェーデンに住んでの北欧民謡に基づく作品を手がけた時期を経て、帰国後の1962年、当時注目され始めたブラジルのボサノヴァの要素を採り入れたアルバム「ジャズ・サンバ(Jazz Samba)」をギタリストのチャーリー・バード(Charlie Byrd)と共に録音。

 

この経験は翌年、ジョアン・ジルベルト(Joao Gilberto)、アントニオ・カルロス・ジョビン(Antonio Carlos Jobim)というボサノヴァの生みの親との共演による「ゲッツ/ジルベルト(Getz/Gilberto)」として結実し、ジャズ・ボサノヴァ両ジャンルの架け橋として不朽の名声を獲得することとなった。

 

以上、様々なアーティストとの共演を得意とするゲッツだが、ここではクール・スタイルを感じ取りやすいパフォーマンスをお聴き頂こう。

 

ザ・レディ・イン・レッド(The Lady in Red)