ジャズ on the net|JAZZの名曲・名演を動画で試聴

Jazzの歴史から代表的アーティスト、名演奏、スタンダードナンバー、おすすめの名盤まで―YouTubeの動画を視聴しながら、ジャズを愉しむためのツボをご紹介します。

クリスマス・ジャズ(2)―マンハッタン・トランスファー、デューク・ピアソン

クリスマス・ジャズの第二回。

 


私の属する世代には、「アカペラ」と聞いて反射的にマンハッタン・トランスファー(The Manhattan Transfer)の名を思い浮かべる人が多いのではないかと思う。

 

ポップス・フィーリングに富んだジャズ・コーラス・グループとして、1970年代から華々しい活動を展開し、その人気と確固たる実力によりグラミー賞も多数受賞している。

 

その広く親しまれる音楽性をもって、マンハッタン・トランスファーは1992年に「クリスマス・アルバム(The Christmas Album)」をリリースしたが、2005年、さらに「アカペラ・クリスマス(An Acapella Christmas)」を世に送り出した。

 

アカペラの代名詞的な存在であるマンハッタン・トランスファーだが、意外なことに、「アカペラ・クリスマス」はこのグループ初の全編アカペラ・アルバムで、個々の歌唱力とコーラスのスキルは言うまでもなく、クリスマスの名曲に効かせた絶妙なアレンジも存分に愉しめる。

 

ジングル・ベル(Jingle Bells)

 


もう一枚、ピアニスト、デューク・ピアソン(Duke Pearson)による「メリー・オール・ソール(Merry Ole Soul)」をご紹介して一先ずこのジャズ・クリスマスを終えたい。

 

こちらは1969年の録音。

 

パーソネルはリーダーのピアソンの他、ベースのボブ・クランショー(Bob Cranshaw)、ドラムスのミッキー・ローカー(Mickey Roker)というトリオ編成に、アイアート・モレイラ(Airto Moreira)をパーカッションに加えている。

 

収録曲すべてがクリスマス・ソングというこのような企画物を、泣く子も黙る正統派ジャズ・レーベルであるブルー・ノートが出したというのは驚きだが、1966年に同レーベルはリバティ・レコードに買収されており、創設者として理念の中核を担ってきたアルフレッド・ライオンも1967年に引退して、その気風に変化が生じた結果なのかもしれない。

 

アルバムの顔、カバー・アートも軽いと言わざるを得ないものの、内容は流石に充実している。

 

名曲に施された洒落た味付けをリラックスして聴くも良し、「そりすべり(Sleigh Ride)」におけるピアソンの"フレージング"、「リトル・ドラマー・ボーイ(The Little Drummer Boy)」でのミッキー・ロッカーのスティック・ワークなどに酔うのも、また良し――哉。

 

そりすべり(Sleigh Ride)