クリスマス・ジャズ(2)―マンハッタン・トランスファー、デューク・ピアソン
クリスマス・ジャズの第二回。
私の属する世代には、「アカペラ」と聞いて反射的にマンハッタン・トランスファー(The Manhattan Transfer)の名を思い浮かべる人が多いのではないかと思う。
ポップス・フィーリングに富んだジャズ・コーラス・グループとして、1970年代から華々しい活動を展開し、その人気と確固たる実力によりグラミー賞も多数受賞している。
その広く親しまれる音楽性をもって、マンハッタン・トランスファーは1992年に「クリスマス・アルバム(The Christmas Album)」をリリースしたが、2005年、さらに「アカペラ・クリスマス(An Acapella Christmas)」を世に送り出した。
アカペラの代名詞的な存在であるマンハッタン・トランスファーだが、意外なことに、「アカペラ・クリスマス」はこのグループ初の全編アカペラ・アルバムで、個々の歌唱力とコーラスのスキルは言うまでもなく、クリスマスの名曲に効かせた絶妙なアレンジも存分に愉しめる。
もう一枚、ピアニスト、デューク・ピアソン(Duke Pearson)による「メリー・オール・ソール(Merry Ole Soul)」をご紹介して一先ずこのジャズ・クリスマスを終えたい。
こちらは1969年の録音。
パーソネルはリーダーのピアソンの他、ベースのボブ・クランショー(Bob Cranshaw)、ドラムスのミッキー・ローカー(Mickey Roker)というトリオ編成に、アイアート・モレイラ(Airto Moreira)をパーカッションに加えている。
収録曲すべてがクリスマス・ソングというこのような企画物を、泣く子も黙る正統派ジャズ・レーベルであるブルー・ノートが出したというのは驚きだが、1966年に同レーベルはリバティ・レコードに買収されており、創設者として理念の中核を担ってきたアルフレッド・ライオンも1967年に引退して、その気風に変化が生じた結果なのかもしれない。
アルバムの顔、カバー・アートも軽いと言わざるを得ないものの、内容は流石に充実している。
名曲に施された洒落た味付けをリラックスして聴くも良し、「そりすべり(Sleigh Ride)」におけるピアソンの"フレージング"、「リトル・ドラマー・ボーイ(The Little Drummer Boy)」でのミッキー・ロッカーのスティック・ワークなどに酔うのも、また良し――哉。