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ドラム(2)―アート・テイラー、マックス・ローチ

先に「ジャズ・ドラム(1)」でご紹介した二人、アート・ブレイキー(Art Blakey)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(Pillie Joe Jones)とは趣を異にする、しかし極めて重要なドラマーとしてアート・テイラー(Art Taylor = Arthur S. Taylor, Jr、1929年4月6日-1995年2月6日)を取り上げないわけにはいかない。

 

Art Taylor

 

テイラーのドラミングはどちらかというとソフト、かつ乾いた響きをもっているのが特徴で、繊細なシンバル・ワークも一級品である。

 

さまざまなセッションにおいて重要な働きをし、もし彼がいなかったら1950年代から60年代前半にかけてのジャズ黄金期は出現しなかったはず――と言っても、強ち間違いではないだろう。

 

また、レッド・ガーランド(Red Garland)・トリオの土台を支えたドラマーということも記憶の隅に留めておきたいところだが、同時代に、同じファースト・ネームを持つ巨人アート・ブレイキーがいたこともあってか、やや影が薄くなってしまっているのが実情だ。

 

これは、ブレイキーやフィリー・ジョーが、サイドマンとして参加した作品においても明確な自己主張の意図を感させるのに対し、テイラーはあくまで裏方としてパフォーマンスを支える役に徹したことにも拠るに違いない。

 

が、人によっては、その点が逆に、テイラーの印象として残ることにもなっている。

 

かく言う私がその一例だ。

 

次にご紹介したパフォーマンスは、そんなテイラーの数少ないリーダー作から選んだ。


ストレート・ノー・チェイサー(Straight, No Chaser)

 

 

 


もう一人、マックス・ローチ(Max Roach、1924年1月10日-2007年8月16日)をご紹介しておきたい。

 

Max Roach

 

10歳でドラムを始め、20歳までにはジャズ・クラブでのプレイや、チャーリー・パーカー(Charlie Parker)、ディジー・ガレスピー(Dizzy Gillespie)といったビッグ・ネームとの共演を果たしていたローチは、1952年、チャールス・ミンガス(Charles Mingus)と共にデビュー・レコードを設立。

 

翌年には、ローチにとって初のリーダー・アルバム「ザ・マックス・ローチ・フューチャリング・ハンク・モブレー(The Max Roach Quartet featuring Hank Mobley)」を同社からリリースした。

 

そして1954年、盟友ともいえるクリフォード・ブラウン(Clifford Brown)と共にダブル・ネームのクインテットを結成し、広く脚光を浴びることとなるのである。

 

「ジャズ・トランペット(1)」でもご紹介したが、ブラウンの持ち味は、優れた「歌心」にある。

 

jazz-cafe.hatenablog.com

 

ローチの演奏もまた、しばしば「歌うようなドラム」と評され、この二人を両輪としたクインテットの流麗なパフォーマンスは、それまでジャズに馴染みのなかった人々をも惹き付けたに違いない。

 

ジャズ評論家、粟村政昭氏の「ローチは、メロディを"叩く"ことのできた最初のドラマーである。」との言は、まさに彼の特質を射抜いているといえよう。

 

しかし、上に挙げたリンク先にも書いたように、盟友ブラウンが1956年に自動事故で他界したため、この豊潤なクインテットはわずか2年で活動を終える。

 

1957年には、後に妻となる(しかし、さらに後日離婚)歌手アビー・リンカーン(Abbey Lincoln)のアルバム「ザッツ・ヒム(That's Him)!」を、豪華な伴奏陣の一人として強力に支えた。

 

最後にもう一点、1962年、ベーシストのチャールズ・ミンガスと共にデューク・エリントン(Duke Ellington)のレコーディングに参加し「マネー・ジャングル(Money Jungle)」という瞠目すべき作品を生み出すに与ったことも記しておく。

 

フィッリーデ(Filide)