降っても晴れても(Come Rain or Come Shine)
前回に続き、ジャズ・スタンダードナンバーを取り上げたい。
多くの聴衆やアーティストに愛されて、歌い継がれ、演奏され続ける曲を「スタンダード・ナンバー」ということは先にも述べたが、この言葉の由来をご存知だろうか?
これは、もともとニューヨークのマンハッタン28番通りの一角にある「ティン・パン・アレイ(Tin Pan Alley)」という有名な音楽出版街で使われていた言葉で、一年を通じて、さらには長い年月にわたって平均して(Standard)良好な売れ行きを示す曲を意味していた。
つまり、現在使われている意味と基本的には同じということになる。
このスタンダードの同義語として「常緑樹」を意味する「エバー・グリーン(Ever Green)」という言葉もあり、個人的にはこちらの方が詩的でよいと思うのだが、現在ではほとんど耳にすることがない。
また、ジャズとは無関係ながら、細野晴臣、鈴木茂、松任谷正隆、林立夫の4人が結成した日本の伝説的音楽ユニットの名称も上の地名からとられたものであることは、もうお分かりだろう。
では、前置はこれくらいにして、曲の紹介に移る。
今回のスタンダード・ナンバーは "Come Rain or Come Shine"。
言うまでもなく、「どんなことがあっても」という意味だが、邦題は敢えて逐語的に訳し、「降っても晴れても」としている。
しかしこちらの方が語感もよく、なかなかの名訳だと思う。
原曲は1946年に封切られた黒人ミュージカル「セントルイスの女(St. Louis Woman)」において歌われたもので、「どんなことがあろうとも、僕は誰よりも君を愛する、降っても晴れても、喜びも悲しみもともに分かち合おう」という内容のラブソングである。
作曲はハロルド・アーレン(Harold Arlen)、作詞はジョニー・マーサー(Johnny Mercer )。
ここでその詩の一部を引用させてもらい、参考までに拙訳を付しておく。
I'm gonna love you like nobody's loved you
誰よりも強く、僕は君を愛する
Come rain or come shine
晴れの日も雨の日も
High as a mountain
山のように高く
And deep as a river
そして川のように深く
Come rain or come shine
どんなことがあっても
I guess when you met me
僕と出会った時、君は思っただろう
It was just one of those things
これもありふれた出会いの一つ、と
But don't you ever bet me
けれどそれは君の思い違いだ
'Cause I'm gonna be true
なぜなら僕は真剣だから
If you let me
どうかそれをわかってくれ
前回ご紹介した「グリーン・ドルフィン・ストリート」同様、この舞台も成功とはいかなかったが、曲の方は人々の耳に残ったようで、その後途絶えることなく愛され続け、数多のアーティストによりさまざまなパフォーマンスが残されている。
ここではエラ・フィッツジェラルド(Ella Fitzgerald)のヴォーカルと、ケニー・ドリュー(Kenny Drew)によるインストゥルメンタルをお聴き頂きたい。
https://www.youtube.com/watch?v=Zo4EyioMFyA
https://www.youtube.com/watch?v=d3LeL9Qej7g