ジャズ初心者喫茶|名曲・名演を動画で試聴

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ベース(2)―ロン・カーター、スコット・ラファロ

今回はまたミュージシャンへと戻り、まだ一度しか取り上げていないジャズ・ベーシストをご紹介しようと思う。

 


破天荒、自堕落といった形容詞が付きもののジャズ・ミュージシャンの中、異彩を放っているのがロン・カーター(Ron Carter、1937年5月4日- )である。

 

Ron Carter

 

1959年にイーストマン音楽学校を出たカーターは、チコ・ハミルトン(Chico Hamilton, ds)のグループでプロデビューを果たすとともに、並行してアカデミックな修養も重ね、1961年にマンハッタン音楽学校修士課程を修了。

 

そして後には、ニューヨーク市立大学シティカレッジの音楽学部で20年以上に亘り教壇に立った。

 

この経歴からも窺える通り、初めはクラシック音楽界を目指したが、当時まだアメリカに根強く残っていた人種差別の壁もあってその夢は実現しなかったという。

 

1959年のジャズ界へのプロ・デビュー後、「ジャズ・ベース(1)」でもご紹介したポール・チェンバース(Paul Chambers)、サム・ジョーンズ(Sam Jones)といった優れたベース奏者との交流を通じて自らのスタイルを確立し、その柔軟自在なプレースタイルが、モード・ジャズを模索していたマイルス・デイヴィスに目に留まって、1963年の「Seven Steps to Heaven(セヴン・ステップス・トゥ・ヘヴン)」から68年の「Filles De Kilimanjaro(キリマンジャロの娘)」に亘る数多のセッションに参加することとなったのである。

 

さらに1970年代の半ばには、かつて共に盤石のリズム・セクションとしてマイルスのバンドを支えたトニー・ウィリアムス(Tonny Williams, ds)の呼びかけに応じ、御大ハンク・ジョーンズ(Hank Jones, p)をリーダー(?)に頂いたグレイト・ジャズ・トリオ(The Great Jazz Trio)で華々しいパフォーマンスを見せている。

 

その後の活躍も目覚ましく、母国アメリカはもちろん、日本でも非常に高い人気を誇っているベーシストだ。

 

サテン・ドール(Satin Doll)

 

 

 


もう一人、夭折した天才ベーシスト、スコット・ラファロ(Rocco Scott LaFaro、1936年4月3日-1961年7月6日)を忘れるわけにはいかない。

 

Scott Lafaro

 

この名前からも窺える通り、ラファロはニュージャージー州のニューアークでシチリア系の音楽一家に誕生し、家族の影響もあって11歳でピアノを、次いでクラリネットも始める。

 

そして高校生になるとテナーサックスも手にしたが、ほどなくしてこの楽器に対する自らの才能に疑念を抱き始め、丁度その頃リロイ・ヴィネガー(Leroy Vinnegar)のベース演奏を聴いて大きくこちらへ傾倒したというエピソードが伝えられている。

 

続いて大学の音楽科へ進んだものの、一年余りで中退してプロのジャズ・アーティストへの道を踏み出したラファロは、チェット・ベイカー(Chet Baker, tp)、パーシー・ヒース(Percy Heath, b)、ベニー・グッドマン(Benny Goodman, cl)などと共演。

 

そして1959年、ビル・エヴァンス(Bill Evans, p)と運命的な出会いを果たし、ドラムスのポール・モチアン(Paul Motian)を加えたトリオを結成する。

 

1961年6月25日、このトリオがニューヨークのジャズ・クラブ「ヴィレッジ・ヴァンガード」で行った伝説的ライブは、後に「サンデイ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード(Sunday At The Village Vanguard)」「ワルツ・フォー・デビイ(Waltz For Debby)」の2枚のアルバムとして結実し、これらは現在でも名盤中の名盤としての評価を保ち続けている。

 

しかし、ライブからわずか11日後、ニューポート・ジャズ・フェスティバルへの出演を終えてニューヨークへ帰る途中、自ら運転する車が路傍の大樹に衝突し、25歳という若さでこの世を去った。

 

上記アルバムにも遺憾なく聴くことのできる、「ベースを管楽器のように奏でる――」と評されるラファロのプレイ、その特質は、少年時に触れたクラリネットとテナーサックスの感覚に深い所で根ざしているのかもしれない。

 

ディープ・イン・ア・ドリーム(Deep In A Dream)